ちょっと不思議な旅の指針にと、大人も子どもも楽しめるように作られた本書であるが、一般的には、不思議な話や怪奇現象の類いは、子どもに悪影響をおよぼす「オカルト」と見なされている。しかし、こうした情報は、一人で触れるよりは、友達や家族と共有すると、その悪影響が間接化されることがメディア論では、広く知られている。

 かつて奇妙さや不思議さは、神社などでの「祭り」等を通じて共有され、その「闇」の部分も含めて社会の一部だった。しかし現代は、子どもが一人で情報にのみ込まれやすいネット社会であるだけに、家族などと不思議で奇妙な話を共有することの大事さは増している。そして何よりも、こうした不思議や奇妙な話を通じた親子や友達とのコミュニケーションは、ある意味で、秘密の共有が互いの関係を強くするように、これまでとは違った関係を作り出すに違いない。佐藤さんは本の始まりで、こう言う。

「真なる発見の旅とは、まだ見ぬ景色を探すことではない。世界を見る新たな目を、見つけることである。それでは、世界の不思議をめぐる奇妙な旅に出かけましょう」

 奇妙な旅は、これまでと違った何かをもたらしてくれるに違いない。(ライター・本山謙二)

AERA 2017年8月14-21日号