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稲垣えみ子「アマゾンとは私たち自身 果てしなき欲望のその先は」

連載「アフロ画報」

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稲垣えみ子AERA

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。2016年1月まで朝日新聞記者。初の書き下ろし本『魂の退社 会社を辞めるということ。』(東洋経済新報社)が発売中

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。2016年1月まで朝日新聞記者。初の書き下ろし本『魂の退社 会社を辞めるということ。』(東洋経済新報社)が発売中

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

*  *  *
 先々週のアエラの「アマゾン特集」を非常に興味深く読ませていただきました。

 アマゾン依存。それがこの特集の前提です。私たちはもはやアマゾンでモノを買わずにいられない。だからその秘密主義や得体の知れなさが気になる。というわけで特集はアマゾンで働く人々にインタビューを試み、結果、アマゾンは秘密主義でもなんでもなくて、むしろ「顧客第一主義」であるということが繰り返し語られるわけです。

 いや非常に納得しました。

 アマゾンを成長させているのは「どこかの黒幕」や「有能な戦略家」でもなんでもなくて、私たちの中にある欲望なのです。アマゾンそのものは非常に機能的で優良な会社であり、ゆえにいち早く人の欲望を体現しているに過ぎない。こりゃ成長して当たり前だ。だってアマゾンとは私たち自身なのですから。

 で、こうしてどこまでも約束された私たちの欲望は何を生み出すのでしょう?

 アマゾンによれば私たちの欲は明快。早く、安く、多く。これはグローバルな巨大企業にしか実現できません。かつて地域の小売店はスーパーに客を奪われ次々と消えていきましたが、今やスーパーがアマゾンに客を奪われている。先進地アメリカではショッピングモールが倒れ始めている。

 この先、私たちを待ち受けるのはどんな世界なのか。

 会社を離れ地域で暮らしてみると、小売店とは実にすごい存在だと改めて気づきます。そこはモノを売るだけの場所じゃない。店主の顔が見える店では店と客が繋がり、客同士が繋がり、そこに緩やかで自然なコミュニティーが生まれ、つかず離れずの助け合いが当たり前に生まれる。

 でもアマゾンで100回モノを買っても繋がりは生まれません。繋がりのない社会では何をするのもカネ次第。これからは人生100年だそうです。厳しく長い老後を、我々はお金の力だけで生きていけるのでしょうか。巷で言われるように1億円あれば大丈夫なのでしょうか。結局のところ我々の未来は我々自身が選んでいるのです。

AERA 2017年8月7日号


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稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。元朝日新聞記者。著書に『魂の退社』(東洋経済新報社)など。電気代月150円生活がもたらした革命を記した魂の新刊『寂しい生活』(同)も刊行


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