●歩き回る距離が短く

 アマゾンフレッシュ事業本部の荒川みず惠リテール事業部長は、こう話す。

「新鮮な食品を鮮度を保ちながらお客さまにお届けすることを目指すサービス。そのため、アマゾンの配送センターのなかでもここは、とくに手作業のオペレーションが多くなっています」

 シニアオペレーションズマネージャーの金子和成さんによると、同じ商品が必ずしも同じ棚に並んでいない商品の並べ方も、

「各国のアマゾン独特の方法です」

 人が棚の空きスペースを見つけ、商品を入れてシステムに登録するという。そう言われて、ある常温の食品棚を見てみると、お菓子2箱とみそ1パックが同じ棚に並んでいたりして、一見、奥からたまに5年前の瓶詰め塩辛なんかが発掘される、家のぐちゃぐちゃな食品ストック棚にそっくりなんですけど。

 ところが、ここではこれが効率的な並べ方になるそうで。たしかに棚の隙間はほかの商品で埋めてあるほか、同じ商品が倉庫のあちこちに分散して置かれているので、ピックアップする人が歩き回る距離も短くなることが多い。
●異なる温度帯を1台で

 米国アマゾンが開発した需要予測のプログラムも、おいしく、早く、安く商品を届けるサービスに貢献している。過去の購入状況から発注を効率化するプログラムなどで、アマゾンフレッシュでは、これに日本市場独特の要素も加えている。

「専用のカスタマーサービスがFCに常駐しているのも、日本のアマゾンフレッシュだけ。紙袋の裏にも問い合わせ電話番号を明記してあります。食品だけに、万が一、一刻を争うような事態が起こったときも迅速に動けるようにするためですね」(荒川さん)

 そうこうするうち私の注文は、温度の高い物から順に「トート」と呼ばれる保冷バッグに温度別に入れられて、13時半出発のトラックの荷台に。配送場所にもよるが、この荷物の場合、いったん江東区のアマゾンプライムナウの配送センターに送り、早さが売りの「プライムナウのネットワークを利用して」最短4時間の配送が可能になるという。

 16時半。「プライムナウ」のロゴが入った車がアエラ編集部のあるビルの駐車場に入ってきた! 外は猛暑だが、アメリカで開発したというトートと断熱材、日本独自の保冷剤の合わせ技で、それぞれの温度を十数時間キープする仕組み。保冷車も必要ないので、違う温度帯の商品を同じ車で運べるところがワザありだ。

 さっき川崎で見た私のお刺し身も、冷たいままで鮮度をキープ。なのに届けてくれた人のぬくもりは感じられて、なんだか、ジーン。自分は毎日のようにアマゾンから荷物が届くヘビーユーザーだが、今まで、ロボットと「欧米か?」の、よそよそしい通販と思っていて、ごめん。(ライター・福光恵)

AERA 2017年7月24日号