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IS壊滅してもテロが続く“思想感染”という病

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by 山本大輔

有志連合軍によるIS制圧作戦が続くイラク・モスル。ISが爆破したヌーリ・モスクの敷地には、「人間の盾」にされた住民が次々と避難してきた (c)朝日新聞社

有志連合軍によるIS制圧作戦が続くイラク・モスル。ISが爆破したヌーリ・モスクの敷地には、「人間の盾」にされた住民が次々と避難してきた (c)朝日新聞社

保坂修司(ほさか・しゅうじ)/専門はペルシャ湾岸地域近現代史、中東メディア論。在サウジアラビア日本大使館専門調査員などを歴任 (c)朝日新聞社

保坂修司(ほさか・しゅうじ)/専門はペルシャ湾岸地域近現代史、中東メディア論。在サウジアラビア日本大使館専門調査員などを歴任 (c)朝日新聞社

 過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅が近い。それでも過激派思想の信奉者は世界各地に潜んでいる。思想感染を止めない限り、テロとの戦いは終わらない。

*  *  *
 シリアでラマダン(断食月)中にコーランを読むISの戦士。ISの「首都」ラッカで重機関銃を構えるISの部隊──。

 ツイッターを検索すると、IS関連の画像や動画が比較的簡単に見つかる。これまでISは、主張や指示の発信、兵士の勧誘、信奉者の拡大などのためにSNSを積極活用してきた。

「ISはメディア戦略としてSNSで情報発信している。(メッセージアプリの)テレグラムは組織的に使われることが多いが、ツイッターは個人で使われるケースが多い」

 そう説明するのは、日本エネルギー経済研究所の研究理事で、同研究所中東研究センター副センター長の保坂修司氏。イスラム過激派についての著書が多く、8月23日に新著『ジハード主義』(岩波書店)を出版する中東情勢の専門家だ。

 事態を深刻視したツイッター社は2015年以降、テロを助長するアカウントの凍結措置を本格化。ロイター通信によると、昨年8月中旬までに、少なくとも36万件を閉鎖。大半がIS関連だったというが、閉鎖してもすぐに新しいアカウントがつくられるなど、いたちごっこが続く。

●陥落寸前のIS拠点

 ISは14年6月、シリアとイラクにまたがる地域にカリフ(イスラム共同体の長)制国家の樹立を一方的に宣言し、影響力を拡大した。忠誠を誓った個別の過激派組織の拠点地域などを属州と位置づけ、中東やアフリカ、アジア、欧州などにもシンパを抱える。01年の米同時多発テロを主導した国際テロ組織アルカイダに代わる、イスラム過激派組織の代名詞となった。

 世界各国を攻撃対象とし、各地でテロ行為や外国人の誘拐、殺害などを首謀してきた。中東や欧州、アジアなどから集まった外国人戦闘員の数は、米政府推計で、80カ国以上から1万5千人に達したとされる。

 そのISが今、存亡の瀬戸際にある。シリアでは、ロシアやイランの軍事支援を受けるアサド政権軍や、米国主導の有志連合軍の攻撃で、ISが「首都」とするラッカの陥落が近い。イラクでも最重要拠点のモスルが陥落間際にあり、勢力の衰退が著しい。

 ロシア国防省は5月下旬の空爆でIS最高指導者バグダディ容疑者が死亡したと発表。米国も有志連合軍による5月下旬の空爆で、IS最高位宗教指導者とされるビナリ容疑者が死亡したと公表した。IS支配の象徴とされたヌーリ・モスクをIS自らが爆破してしまうなど、この組織の終わりが迫っている。


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