地に落ちたイメージを回復させて、業績も上向かせる……。これまで、多くの企業が直面し、その実現に腐心してきた。これは、個人の場合でも同じこと。落ち込んだ底が深ければ深いほど、復活には時間がかかる。AERA 2017年7月3日号では、「どん底からの脱出」と銘打ち、見事V字回復した企業を大特集。そのとき企業は、個人は、何を考え、どう振る舞うべきなのか。当事者たちの話を聞いた。
一連の騒動で最も大きな影響を受けたのは、自らの資金で開業したフランチャイズオーナーたちだ。店舗の経営はみるみる悪化。本社を呪いたい夜はなかったのか。
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「これね、一緒に貼りたいの」
5、6歳だろうか。アジサイの塗り絵を手にした男の子が、クルーと呼ばれるアルバイトの制服の裾を引っ張った。
「いいよ、ちょっと待っててね」
完成したばかりの塗り絵を店内に貼って、うれしそう。青、紫、赤……。壁にはびっしりと、子どもたちが描いた色とりどりのアジサイが咲いていた。
6月16日、取材に訪れた神奈川県横須賀市のマクドナルド三春町店で行われていた子ども向けクルー体験イベント「マックアドベンチャー」の一幕だ。小さな青い制服に身を包み、クルーと一緒にハンバーガーを作った。
●子どもたちがいない店
一連の騒動で落ち込んだファミリー層を店舗に呼び戻そうと強化された取り組みだ。各店舗の裁量でプログラムや開催時間は異なるが、ここ三春町店では最後に塗り絵を描いて終了する。
「お母さんたちが、『参加すると子どもがちょっと大人びて見える』と言ってくれるんです」
この店のオーナー、高橋輝行(61)は目を細めた。
高橋は三浦半島を中心に18店舗を経営。元は日本マクドナルドの社員だった。30歳を過ぎて一定の条件を満たすと独立できる制度を利用して、50歳で独立を決意。自称「遅咲き」のフランチャイズ(FC)オーナーだ。社員時代から40年近くハンバーガーを作り続け、もはや「血までケチャップ」だと笑う。
マクドナルドの店舗には、FCオーナーが所有する店舗と、本部が直接経営する直営店とがある。全2900店舗のうち約7割がFC店。1店舗だけを所有するオーナーもいれば、100店舗以上を経営するオーナーもいる。コンビニと同様の仕組みで開業するには自己資金がいるが、「自分の店を持つ」という夢をかなえられるし、マクドナルドというブランドが顧客を呼び込んでくれる。平均年商も約20億円と高い。
だが、期限切れ鶏肉、異物混入問題では、FCのリスクの面が顕在化した。