「誰かを健康にすることで稼げるビジネスが日本ではまだ確立されていない。40兆円という医療費を人を健康にすることで削減できるなら、そこには巨大な市場が眠っているとも言えます」

 2007年設立のケアプロは、駅ナカやパチンコ店、競艇場や競輪場といった場所で、1項目500円からという料金設定で、血液検査や骨密度、肺年齢、内臓脂肪量などを簡易計測できるサービスを提供する会社。「検体測定室」の第1号開設者にもなっている。予防医療事業部の落合拓史事業部長は言う。

「サービス提供当時は『医療行為ではないか』と目されることもあり、闘ってきました」
健康の領域を超える

 もっとも、この市場はまだ「顕在化」はしていないようだ。

「検査はそれほど大きくもうかるビジネスではない。検査項目を増やせばいいのかもしれないが、生活習慣病予防を考えれば弊社の提供サービスで十分。医療費削減というミッション先行でやっています」(ケアプロ落合事業部長)

 調査会社インテージコンサルティングの木原剛シニアコンサルタントも冷静だ。

「検査の市場規模は、まだ100億円未満ではないか」

 一方で、検査を短期的にビジネスとして成功させるために、結果をわかりやすく解釈して「こうすればいいですよ」という解決策や解決のための商品、サービスを提示することも行われている。ものによっては医学的な正確性から離れていく危険性もはらむ行為だ。ミナケアの山本社長は言う。

「最近は減りましたが、少し前までは『旧薬事法の規制にひっかからないが、本当に医療効果があるものを作りたい』というオーダーをよく耳にしました。道交法は守れないがかっこいい車を作ってくれ、と言っているようなものです」

 冒頭に登場した血液検査は、HbA1cや脂質量などかなり客観的に体の状態や疾患のリスクを示すものだ。それでも、その数値を解釈することは難しい。標準値から外れていても、その人個人にとって異常なのかどうかまでは判断しにくいからだ。

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