お目当てはなんといっても高速車両の展示。エントランスを入るとすぐ、光を落とした展示空間の中で三つの車両が浮かび上がる。蒸気機関車、新幹線試験電車、そして超電導リニア。それぞれの時代で世界最高速度を記録した実物のスピードランナーたちだ。

 この「シンボル展示室」にある蒸気機関車は、1954年に時速129キロを出した「C62形式」。もともと木曽川橋梁の強度を測るために試験で走らせたものだったが、そこで狭軌の蒸気機関車による世界最高速度を出した。「超電導リニアMLX01-1」は、95年製造のもの。03年に山梨リニア実験線(山梨県)で当時の世界最高速度581キロを出した。近未来的な長いノーズには「座らないでください」という注意プレートも。時代に求められて最先端を走った「本物」には、鉄道ファンでなくても心が震える。

●見たら幸せになる黄色

 この3両に続いて歓声が聞こえるのは、歴代の新幹線や在来線など39両が並ぶ車両展示室だ。2階のデッキから眺めると、先頭部をずらしてV字になるようにレイアウトされている。0系新幹線の食堂車、大正時代から昭和18年まで関西本線で使用された「ホジ6005形式蒸気動車」など、レアな車両も多い。この展示は車内見学や写真撮影がしやすいと好評だ。

 車両の一部は船で運ばれ、すぐ裏の港から館内まで敷いたレール上をゴロゴロ入ってきたそう。圧巻の車両群の中でも目立っていたのは黄色い新幹線、通称「ドクターイエロー」。

「この中で一つだけ違う使命を帯びていますからね」

 そう語るリニア・鉄道館副長、西田良和さんの思いも熱い。実際の新幹線の速度で走行しながら、架線や信号の検査・測定をする事業用新幹線だからだ。

「どうも90年前後の論文で『ドクターイエロー』という名の記述が見られ始めたようです。新幹線の設備を見るお医者さんなので抜群の表現。この車両が安全を守っているんです」

 夜間でも視認性が高い黄色の車体で、今も700系をベースにした「ドクターイエロー」が10日に一度ほど昼夜を走る。「見たら幸せになれる」なんて都市伝説もあり、子どもたちにも人気だ。ここでは0系ベースのかわいい子が常時見られる。9月までは「ドクターイエローの軌跡」展も開催中だ。

次のページ