エリートの象徴“東大法学部”はなぜ「砂漠」なのか

東大

2017/03/22 16:00

 同じく幹事長の角谷佳晃(すみや・よしあき)さん(3年、22)も、官僚を目指している。

「これまでは順位を競って生きてきたが、相対評価ではなくみんなと何かを作り出す仕事に就きたいです」

 これも、低成長時代ならではの「志」だろう。

●自由放任に助けられる

「日本の衰退をただ漠然と見ているのは悲しい」と中央官庁を目指す2年生の男子学生(21)も、「普段は言わないけど、酒を飲んで熱くなったら国のために何をどうするべきか議論するタイプが東大法学部には多い」という。その理由は、昨今の社会の流れにあると彼は分析する。

「近年は自分の進路に対して『なぜそれをやるのか』求められる時代。かつては法学部を出てなんとなく就職するルートが勝ち組でしたが、今はそれでは通用しない。そういう社会の風潮に、いわば東大法学部生は『適応』しているんだと思います」

「東大砂漠」に対する受け止め方も、実はさまざまだ。弁護士を目指す2年生の女子学生(20)は、「授業は出れば出るだけ面白くなる」ともいう。 

「本で読んでも内容はわかりますが、やっぱり実際に授業で聞いたほうが理解できる。特に法律は社会や日常で役に立つ知識だから聞いていて面白いです」

 外資系企業からベンチャーに移った20代男性OBは、法学部の自由放任さに助けられた。

「在学中に東日本大震災が起き、現場で震災復興に携わりました。米国の大学のようにハードスケジュールなら震災復興には携われなかったと思います」

 官僚にあこがれたが、縦割り組織で長い下積みを要求されることを知り魅力を感じなくなった。震災を経験したことで「思い立ったときにすぐ動ける人間になりたい」と思ったことが、今の経歴に結びついている。

 将来像を模索して試行錯誤する法学部生の姿は、法学部=エリートという短絡思考を脱し、東大法学部が「普通の大学」化していることの表れではないか。東大法学部も多様化する社会情勢と学生の気質に対応し、ただ学生を放任するのではなく、意識的に育てるカリキュラム変革を進めつつある。

(編集部・福井洋平)

AERA 2017年3月27日号

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