一方、久田教授のように、「耐震等級3」にすると、倒壊リスクを下げるだけでなく、その後も住み続けることができるというメリットが大きい。

本では新耐震も被災

 昨年4月に発生した熊本地震では、住宅約8千棟が全壊した。(1981年に建築基準法が改正される前の)旧耐震基準の建物の半分近くが倒壊したが、(81年以降の)新耐震基準の建物でも2割弱が倒れた。規定が強化された00年以降に建てられた建物の倒壊は約5%だった。

 熊本大学大学院自然科学研究科の松田泰治教授(地震工学)は熊本地震発生当時、熊本市中央区内にある、旧耐震基準で設計された5階建ての官舎に入居していた。一見すると、官舎の建物に大きな被害はなかったが、断層が走る立田山の中腹にあり、地盤にひびが入ったため調査した結果、水道管で大きな被害が見つかり、全世帯立ち退きに。現在は、同じ中央区内にある、耐震チェックを受けた別の官舎に引っ越した。

 松田教授は熊本市内の官舎から職場に通っているが、約10年前に福岡市内に自宅を建てた。

「家を建てる土地は、最初から山谷の近くを避け、平地を選びました。基礎をしっかり打つことに加え、もともと大雨が降ると水がたまりやすいエリアだったので、盛り土をして床を上げました。00年以降の耐震設計で造られているので、構造的には大丈夫と考えています」

 そのうえで2次災害の対策は必要だ。日常的に、揺れから身を守ることを心掛けている。タンスなどの倒れる危険がある家具は、転倒防止の対策をし、仮に倒れたときに、その下敷きにならないようにベッドや頭の位置を決めた。

「地震があったら、まず足を守ることが重要です。揺れで割れたガラスが飛散しているかもしれません。特に夜間は見えづらいので、むやみに歩かないように気をつけます」

 プロの災害対策にならって、対策をこころがけたい。

(編集部・長倉克枝)

AERA 2017年3月13日号