墨田区では17年度入園の新規募集1次選考で、714人の子どもたちのもとへ「不承諾通知」が届いた。認可保育園1222人の枠には、「新住民」より「旧住民」が優先された(写真の一部を加工しています)(撮影/編集部・金城珠代)
墨田区では17年度入園の新規募集1次選考で、714人の子どもたちのもとへ「不承諾通知」が届いた。認可保育園1222人の枠には、「新住民」より「旧住民」が優先された(写真の一部を加工しています)(撮影/編集部・金城珠代)

 どの子を入園させ、どの子を待機にするのか。その線引きは難しい。毎年のように見直される基準に、親たちは翻弄されるばかりだ。「保活」という名の椅子取りゲームは、一体いつまで続くのか。

 認可保育園の申し込み締め切りまで残り1カ月と迫った昨年11月。東京都墨田区に住む女性は、案内の冊子を開いて目を疑った。入園希望者が同点で並んだ場合に承諾と不承諾を分ける16の「優先順位」のうち、最後の二つが入れ替わっていた。

 2016年度入園までは、「居住歴が長い世帯」より「年収の低い世帯」が有利だったのだが、17年度からは逆になったのだ。

●保活引っ越しが裏目に

 都内の「保活激戦区」と言われる地域から入園決定率の高かった墨田区に、妊娠中に引っ越した。居住歴は1年未満。昨年の案内は隅々まで読み、倍率やボーダーラインも調べ上げて、フルタイムの共働きで駅から遠い小規模園なら0歳児クラスに息子を預けられる、と踏んで決めた街だった。「年収の低い世帯」として優先されるよう、妊娠中は残業を控えるなど思いつくことはすべてやった。

「締め切りまでにもう一度引っ越すなんて無理。手はありませんでした。引っ越し先で基準が変わらない確約もないですから。もうギャンブルですよ」

 1次選考では申し込んだ7園すべてで「入所保留」。前に住んでいた区では同僚の子に「承諾」。保活引っ越しが裏目に出た。このままでは仕事を辞めざるを得ず、生活できなくなる。

 国も自治体も企業も本気で取り組んでいるはずの待機児童問題だが、今年も1次選考で不承諾になった親たちの不安や怒りがSNSや街頭にあふれる。多くの自治体が、希望者の保育ニーズを点数化して高い順に入園を決める「ポイント制」をとるが、「きょうだい加点」の見直しや「育休加点」の新設など試行錯誤が続く。本誌は1月30日号で、基準の細分化や加点を得ようとする人が増えることで、子どもの人数や世帯年収など「優先順位」にまで審査がもつれるのではと指摘。実際、大きな悲鳴が上がったのが冒頭の女性が暮らす墨田区だった。

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