「新大統領の財政政策の規模は6500億ドル(74兆円)。これを産業連関表で計算すると、日本の国内総生産(GDP)へのプラス効果は0.1%と推計できます。この程度では所得にほとんど影響しない」

 一方で、深刻なシナリオを警告するのは、経済評論家の斎藤満氏だ。「対アメリカの貿易黒字7兆7千億円のうち、トランプ大統領がやり玉に挙げている自動車産業が占めるのは6兆円弱。これだけの黒字をなくすよう迫られたりすれば、日本のGDPが1.5%も減少することになる」

 このマイナス分の多くは、所得の減少という形で国民が負担させられるという。

「企業は儲かっている時には賃上げせずに内部留保してきたので、苦しい時こそそれを使ってほしいところですが、現実に利益が減る状況に陥れば賃金にはシビアに対応せざるを得ない」(斎藤氏)

(ライター・森田悦子)

AERA 2017年2月27日号