ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任して約1カ月。新大統領は意に沿わない企業やメディアをツイッターなどで厳しい言葉で恫喝してきた。グローバル企業は戦々恐々としている。トランプ政権で世界はどう変わるのか。AERA 2017年2月27日号では、「トランプに勝つ日本企業」を大特集している。

トランプ政策の影響で給料はどうなる?(※写真はイメージ)
トランプ政策の影響で給料はどうなる?(※写真はイメージ)

 日本経済への影響も大きいと見られているトランプ政策。給料、物価、住宅ローン、食品──。日常生活への影響もあるのだろうか。特に気になる給料について取材した。

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「年末からの円安で企業業績はまずまずで、賃上げできる環境は整っている。しかし現実に、それを実行に移すのは難しい」

 そう話すのは、日本総研チーフエコノミストの山田久氏だ。

 トランプ米大統領の経済政策には大幅減税やインフラ投資といった景気刺激策と、自国の産業を優先する保護主義的な政策があり、これらは景気への影響が真逆だ。このことが問題を複雑にしているという。

「前者の効果が大きく出れば日本経済にメリットがありますが、後者のマイナス効果が大きく出ると輸出企業を中心に大打撃を受ける。振れ幅があまりにも大きいので、企業は賃上げに慎重にならざるを得ません」

 保護主義的な政策で最もダメージを受ける自動車業界は、春闘での注目度も高い。

「自動車業界が慎重な姿勢を示せば他業種も追随するので、今年の春闘は前年並みのところがある程度でしょう」(山田氏)

 一方、景気押し上げが見込まれる財政政策にも、過剰な期待は禁物のようだ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏は、日本経済への効果についてこう分析する。

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