「給与明細に残業時間数は明記されているが、自己入力した勤務時間分、満額出ているとは思えない。超過勤務手当の予算が決められており、その範囲内でしか手当は支給されない」

 さらには、残業の考え方が、民間企業とは異なる。日本国家公務員労働組合連合会の鎌田一書記長が、こう説明する。

「労働基準法では時間外労働を行わせるには労使の三六協定が必要ですが、国家公務員は管理職の命令が要件となり、人事院が上限目安を定めているが、仕組みとしては無制限に時間外労働をすることができる」

 ただ、厚労省も長時間労働が常態化する現状を見過ごしているわけではない。

「休むのも仕事です。今度こそ本気です。」

 そんなキャッチコピーを掲げ、15年から省内の働き方改革に取り組んでいる。

「ワーク・ライフ・バランスを重視するいまの若者に、滅私奉公的な霞が関の働き方ははやらない。採用が決まっても、親の反対で駄目になったケースもある。霞が関全体で危機感を持っている」(ある人事関係者)

 そうした背景もあるからだ。

 大臣官房人事課の飯田剛調査官はこう話す。

「希望する者にテレワークを活用させたり、定時退庁や休日出勤などに関する具体的な目標を掲げたりした。人事評価にも取り入れ、管理職も早く帰るように声をかけるようになった」

 省内の改革チームが意識づけに出したのは、二つの数字だ。全職員の65%が毎月1日以上の年次休暇を取得。そして原則20時までに退庁することだ。 

 だが、前者は昨年で70%と成果は出たが、完全退庁時刻は平均6分間短縮したものの、20時を5分過ぎている。

●21時から答弁を作成

 省内の努力にも限界はある。

 先の霞国公のアンケートによれば、残業の理由は「業務量が多いため」(59.5%)がトップ、次いで「国会対応」(29.4%)となっている。

 職員のGさん(30代)は人手不足だと指摘する。

「私が入省した約15年前は係長の下に係員が3人いた。今は一人係長も珍しくなく、係員がいても地方からの研修生や非常勤職員。同じ業務量を期待することはできない」

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