だが、26日のフィラデルフィアでは、

「大統領就任式は、素晴らしかった。主要メディアは決して報じていないが、30万、40万、60万人の観衆が集まった。メディアが公正なことなどない」

 と、メディア批判を続け、意に介する様子はない。

 さらに目立つのは大統領令の多さだ。

 環太平洋経済連携協定(TPP)からの永久離脱、妊娠中絶・避妊を支援する国際団体への資金援助停止、環境保護のため計画停止になった石油パイプラインの建設容認など、オバマ前大統領が促進した政策を全て反故にする勢いだ。国際関係、そして市民生活に大きな影響を及ぼすこの巨大な権限の行使を「楽しんでいる」(CNN)。

 米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、ニコラス・クリストフ氏は、大統領令によって、アフリカなどの女性から、避妊薬や各種ワクチンを得る機会を奪い、貧しく、弱い立場の女性が何千人も死亡することにつながると、怒りを込めて報道した。大統領令の影響は計り知れない。

 最大の公約であり、不法移民流入を阻止するための壁をメキシコ国境に建設する計画の大統領令にも署名。公約通り、その費用をメキシコに負担させると強調したため、メキシコのペニャニエト大統領は、1月31日に予定していたトランプ大統領との会談を中止した。

 トランプ大統領は、女性、メディアだけでなく、あらゆる方面に「戦争」を仕掛け、米国の姿は大きく変わろうとしている。就任後100日間と言われる「ハネムーン」はなさそうだ。(ジャーナリスト・津山恵子)

AERA 2017年2月6日号