金沢工大の一連の取り組みは、国からも評価を得ている。金沢工大は2013年、文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」中核拠点に、私大で唯一選ばれた。

 今後は、学生の成長をさらに効率的にサポートすべく、自己成長支援システムとして、IBMの人工知能ワトソンの導入を準備しているという。

 18歳人口が減少し、「市場」が縮小する中でも、私大は学部も定員数も増加。2014年度以降の3年間をみると、看護系の学部の新設がめだつ、有望とみられる分野での競合が起きている。

 NPO法人NEWVERY高大接続事業部ディレクターの倉部史記さんは、「多くの私大は危機感を覚えており、過渡期にある」と指摘する。

「一部の名門校や人気校を除き、40%もの私大が定員割れを起こしています。今後、大学進学率を極端に上げたとしても、閉校に追い込まれる大学が少なからず出ることが予想されます」

●補助は国立の13分の1

 国立大と私大を単純に収入面で比べれば、私大の分は悪い。国から受ける補助金の規模が異なるからだ。2016年度予算では、国立大学法人運営費交付金の総額は1兆945億円だが、私立大学等経常費補助金は3153億円。国立大、私大と短大の合計の学生数でそれぞれ割ると、学生1人当たりの補助金は、国立大180万円に対し、私大は14万円。およそ13倍もの開きがある。

「各大学は、教職員の雇用の見直しや授業料の値上げを検討するなど、経営改革に着手しています。私大収入は、学費や入学金、受験料など、学納金の占める割合が大きい。魅力ある事業を創設し、国に認められれば、補助金を得ることもできます」(倉部さん)

 学生獲得のうえでも、補助金獲得のうえでも、いかに他大学と差別化し魅力を上げていくかが、私大経営の課題となっているのだ。

 10年連続で志願者数増を達成した福岡工業大学のオープンキャンパスでは、珍しい光景が見られる。

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