憧れてなった大学職員。しかし現場は、よく言えば世間の影響をあまり受けず、悪く言えば閉鎖的な空間だった。明確な評価基準は存在せず、昇給は年功序列。抜擢や昇進は「上司に気に入られたから」。技量にかかわらず、管理職が大きな権力を持っていた。

 変化の波は徐々に訪れた。理事長が企業出身者に代わり、人事改革が始まったのだ。

 外部コンサルタントにより賃金体系が見直され、昇給体系が改められた。定年退職で人手が減っても正社員補充は見送られ、派遣社員など非正規雇用者が増えた。今では半数近くを占める。

 一方、広報や財務、キャリア支援など、専門性が求められる課では企業経験者を奮って採用するようになった。

「管理職も多くは転職者が務めています。勤続年数の長い管理職もいますが、30代の企業経験者のほうが、圧倒的に仕事ができる。何もできない年配者は、窓際に追いやられています」

 経営改革では致し方ないのかもしれないが、残ったのは、ゆがみだらけの社員構造と、「不公平感」だ。

 女性はこれまで、その時々自ら考え、誠実に仕事を積み上げてきた。それでも自身の将来的なキャリアに不安がないわけではない。産休や育休を取得でき、復帰もできる職場環境は貴重だとも思う。

 職場には毎年、名門大学を卒業し、数カ国語を操り、大企業もほしがるだろう新卒者が入職してくる。経験のある転職組を重用し、若手を育てる雰囲気を失いつつある環境で、後輩が他業種でも通用するスキルを身につけ、あるいは今の職場で管理職になれる日が来るのか。女性には自信が持てない。

●40歳で年俸1千万円も

 有名大学になると、募集人数に対する新卒志願者数が100倍を超えることも珍しくないなど、就職先としていまも人気の大学職員。東京地区私立大学教職員組合連合(私大教連)が発行する「首都圏私大の賃金及び教育・研究・労働条件」によると、大卒の大学職員の年俸(諸手当含む)は、慶應義塾大学の場合、40歳で約810万円、中央大学は約1050万円だ。金額はあくまでモデルケースでの算出例であり、実際と大きく異なる場合もあるという。国公立大とは違い、私大は大学の規模や経営状態により、かなりの賃金差があるという。

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