日本学術会議の検討委員会で議論する外園氏(写真右端)と池内氏(右から3人目)(撮影/編集部・長倉克枝)
日本学術会議の検討委員会で議論する外園氏(写真右端)と池内氏(右から3人目)(撮影/編集部・長倉克枝)

 中国、トランプ、北朝鮮、日本を取り巻く環境がきな臭くなっている。専守防衛に徹し、海外に展開できる装備は持たない自衛隊。安保法とトランプ大統領の誕生で、どう変わろうとしているのか。AERA 12月12日号では「自衛隊 コストと実力」を大特集。最新兵器から出世レース、ミリメシまでいまの自衛隊に密着している。その中から、波紋を広げている防衛装備庁の大学などへの委託研究制度について紹介する。

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 昨年度3億円、今年度6億円、来年度は110億円要求。

 増え続けるこの金額は、防衛装備庁が創設した大学などへの委託研究制度の予算額だ。昨年度から、大学や企業を対象に研究資金が導入された。戦後、「軍事技術の研究」は禁止されてきたから、事実上の解禁だ。

 仕組みはこうだ。同庁が提示した研究分野に、大学や企業の研究者が研究計画を提案。採択された研究者は、3年間で最大9千万円の研究費を得て、同庁の助言を受けながら研究する。

●軍事研究の是非で議論

 同様の制度は文部科学省など他省庁でも実施しているが、防衛装備庁の外園博一・防衛技監はその違いをこう説明する。

「委託研究は私たちの防衛行政のために実施するもの。潜在的に、防衛装備(武器)に将来つながる研究を選びます」

 防衛装備品の開発に直結する研究ではない、基礎的なものだというが、一覧にはその分野の第一人者と言われる研究者の名前がずらりと並ぶ。そのひとりで、船の省エネ技術を研究する北海道大学大学院工学研究院の村井祐一教授はこう話す。

「これまでの研究を更に進めて、商船の省エネを実用レベルに引き上げるために応募しました」

 船底を空気の泡で包んで、水の抵抗を減らして燃料消費を少なくする。村井教授はこれまでも、経済産業省などの研究費を獲得してこうした研究をしてきた。今回3年間で約2800万円の研究費を得るが、「ほかと比べて多額というわけではない」。

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