港湾、鉄道、通信など公共事業を重視するトランプ氏の政策は株式市場で好感された。米国はインフラ建設も民主導、政府が前面に出ることはない。とりわけ共和党は経済への「官の介入」を嫌う。不況には公共事業、というのが日本では常識だが、米国は「ルーズベルト大統領のニューディール政策」が語り継がれるように景気対策の公共事業は画期的とされる。
市場が評価するもう一つの要因がトランプ氏が漂わす「緩和ムード」。大富豪のトランプ氏は規制に縛られることを嫌う。
景気が回復途上にある米国は、金融の量的緩和はすでに打ち切られた。中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、すでに政策金利を上げ、2度目の利上げをうかがっている。金利を引き上げれば、マネーは収縮し、株価は下がる恐れがある。
FRBには、金融バブルがリーマン・ショックを招いた手痛い過去がある。イエレン議長はバブル再燃を心配し金融を締め、節度あるカネの流れを目指す。しかしトランプ氏はイエレン議長を名指しで「クビだ!」と発言、再任しない、という姿勢だ。
歴代大統領はFRBへの干渉を控えてきた。そんな常識に無縁なトランプ氏にウォール街は密かに期待している。
選挙中は「反ウォール街」だった。既得政治権力とは、ワシントンの政治家とウォール街が結託したエスタブリッシュメントではなかったか。