米大統領選でトランプ氏の優勢が伝わった9日は急速に株安・円高が進んだ。同日の取引時間中に比べて、日経平均は最大で1931円上昇。ドル・円相場は10円近く円安に動いている (c)朝日新聞社
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 11月18日、日経平均株価は10カ月ぶりに一時1万8千円台、為替は5カ月半ぶりに1ドル=110円台に乗せた。米大統領選のトランプ氏の勝利で株高・ドル高は勢いづくが……。

 弱者を煽って勝利した候補者は一転して強者と手を組んだ。株高・ドル高は、その祝砲だ。

 貧困白人が抱える憤懣、内向きのアメリカ、既成秩序への反乱──。危うさと否定的なイメージがつきまとうトランプ旋風は、アメリカ経済を失速させかねない、と憂慮された。ところが、フタを開けると市場は「歓迎、トランプ大統領」である。

 トランプ相場は三つの要因が押し上げている。(1)共和党政権の誕生(2)財政出動への期待(3)金融緩和基調の継続。

 同時に行われた議会選挙で上院・下院とも共和党が過半数を取り、政府と議会のねじれが解消した。トランプ氏は勝利演説で暴言を慎み、「普通の大統領」を演じた。政権移行チームのトップに副大統領候補のペンス氏を据え、共和党との修復が進む。

●漂わす「緩和ムード」

 トランプ氏は「既成政治への反逆」を売りにして、共和党主流派をこき下ろし喝采を浴びた。だが、それも当選までのこと。大統領になったら議会の多数派・共和党と組むしかない。罵り合った両者は、ためらいもなく抱き合う。それが政界である。

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