カネはなくてもネタはある! 地方テレビ局から力作ドキュメンタリー映画続々

2016/11/12 11:30

●伝えるのは自分だけ

 公正中立であるべきメディアが、一つの政治事象を止める側に立つことに、三上さんは激しい葛藤を覚えた。しかし最後は、一ジャーナリストとして世の中に発信する道を選んだ。

「死ぬ気で基地を封鎖する人の意志を、全国へ伝えるのは自分しかいないと思いました」

 沖縄県内のみで放送した番組の内容がウェブで流れると、全国から多くの声が寄せられた。

「こんな大事なことが起きているのに、何で伝えてくれなかったんですか」

 ねぎらいの言葉より、視聴者から「お叱りの感想」が相次いだ。その後押しもあり、三上さんは映画化を決意する。

 これまでに、この作品を自主上映したいという申し込みは約690件。今も週に4、5件の問い合わせがある。映画を見た本土の人が現地を訪れるようになり、観光バスが乗り付けることも。長年、テレビドキュメンタリーを制作した三上さんだが、沖縄にこれだけ人を呼ぶことができたのは初めて、と驚く。

「テレビと映画の違いがようやくわかりました。劇場に足を運ぶ人は行動を起こす心の準備が整っている。高江に来てくれることが、直接的な力になっています」

 東京・中野の映画館、ポレポレ東中野は積極的に地方テレビ局の作品を上映する。作品を取捨選択する基準を支配人の大槻貴宏さんはこう語る。

「選定は『映画として』面白いか、テーマをどう伝えているか、作品のコミュニケーション力で判断します」

 地方テレビ局は、その経営体力などから、朝夕などに放送されるローカルニュースの自主制作で精いっぱいなところも多い。しかし、地方はニュースの宝庫だ。地域密着型の地方テレビ局だからこそ撮れるものがあることを、これらの作品は物語っている。(編集部・小野ヒデコ)

AERA 2016年11月14日号

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