働く世代は、ストレスや不眠、ちょっとした腰痛など、日々さまざまな悩みを抱えている…(※イメージ)
働く世代は、ストレスや不眠、ちょっとした腰痛など、日々さまざまな悩みを抱えている…(※イメージ)

 働く世代は、ストレスや不眠、ちょっとした腰痛など、日々さまざまな悩みを抱えている。薬で良くなるなら、と睡眠導入剤や抗不安薬を服用している人も少なくない。だが、それが薬物依存症につながるのだとしたら──。

 薬物依存症とは、自分の意思で薬の使用を調整できなくなってしまう障害だ。依存症になりやすい人は、「我慢強い人」「(友人や家族、趣味など)依存するものが少ない人」「人への不信感がある人」だと、国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部の松本俊彦部長は言う。

「デパスを服用して(仕事の)パフォーマンスを保ってきたが、効きが悪くなってきた。眠気やふらつきもある」

 こう訴えて同センター薬物依存症外来を訪れてきたのは、仕事ができると周りから高評価を得ている、あるビジネスマン。

 デパスとは、不眠や不安、肩こり、腰痛などの痛みの症状を和らげる薬。精神科のほか、内科や心療内科、整形外科、脳外科などで処方されてきた。

「副作用も少なく、患者にとって使いやすい薬ですが、依存症になりやすいと問題になっていました。精神疾患と診断されなくても、例えば腰痛や手術前の不安などでも処方されてきました」(松本部長)

 ところが、この患者にとっての「使いやすさ」が薬物依存につながっているのだという。

「不安などの苦しみから逃れるために使い始めますが、不快感がなく、作用時間も短いため、依存になりやすい」

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