「一番大きな予算がつくのは、潜在患者がたくさんいると思われながら、あまり知られていない病気です」と話す先の関係者は、「ここ数年で最も成功した疾患啓発はうつ病」と指摘する。

 以前は、特定の人がひそかに精神薬を服用する、というイメージだったうつが、2000年ごろから疾患啓発CMが始まると「心の風邪」というフレーズが定着。1990年代末に約45万人だった患者数は現在、100万人を超えている。今では街で「メンタルクリニック」という看板を見つけるのも難しくなくなった。

 ほかにも、アニメ「ちびまる子ちゃん」のキャラクターを起用した認知症、舘ひろしさんを起用した禁煙、武田鉄矢さんを起用した神経障害性疼痛のCMなど、記憶に残っている人も多いだろう。

 疾患啓発には、潜在的な患者に治療の機会を与えるという利点がある一方、治療薬についての情報は教えてくれない。「知られていない=薬の副作用も十分に周知されていない」ともいえ、注意が必要だ。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2016年11月7日号