広告規制のある処方薬の販売戦略とは(※写真はイメージ)
広告規制のある処方薬の販売戦略とは(※写真はイメージ)

 商品名やお得感を声高に訴えるテレビCMの後、突然始まる静かなストーリー。患者に優しくほほ笑みかける医師のシーンの後、こんなメッセージが流れる。

「いまや最短12週間。飲み薬のみの治療で治癒を目指せる時代となりました」

 最近、よく目にする「C型肝炎」のCMだ。治療薬「ハーボニー」などを販売するギリアド・サイエンシズが広告主になっている。

 これまではインターフェロン注射による治療がメインで、治癒率も決して高くはなかったC型肝炎。そんな夢のような薬なのであれば、なぜ製品名を出さないのだろうか。

 国民の健康に大きな影響を与える可能性のある抗がん剤など、医師が処方しないと危険な医療用医薬品は、一般への広告が制限されているからだ。

「薬そのものを宣伝できないため、病気を宣伝するのです。これが『疾患啓発』です」

 医療関係の広告会社関係者はこう話す。

「医師に相談」などと病気を宣伝することで病院に人を集め、結果的にその薬を使ってもらおうという狙いだ。MRが医師にいくら薬を宣伝しても、患者がいなければ仕方がない。先のC型肝炎のテレビCMでは最後、こんなメッセージが流れる。

「『治そうC型肝炎』で検索」

 実際にネットで検索すると、C型肝炎の専門医療機関を検索できるページにたどり着く。

 処方薬のプロモーションにかける費用は一般的に、想定売上高の3%程度とされる。ただ、薬を直接、広くPRすることはできないため、医療専門誌で専門家のインタビュー企画を仕掛けたり、医薬関係の学会誌に広告を出したりするのが普通のやり方だ。

「そうした広告は、製薬会社のMRが持つ営業資料になります。会員費で運営される学会誌は厳しいが、専門誌は製薬会社の意図も入れやすい」(先の関係者)

 そんな中、あえてテレビCMを打つのは「よほど潜在患者がいる場合に限る」。テレビCMとなると億単位の費用がかかる。すでに広く知れ渡り、治療薬もたくさん出ている病気ではペイしない。

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