
「らしくてクールな僧侶」
高野山真言宗・総本山金剛峯寺 教学部教学課
課長 赤堀暢泰(43)
撮影/写真部・東川哲也
アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は高野山真言宗・総本山金剛峯寺の「ニッポンの課長」を紹介する。
* * *
■高野山真言宗・総本山金剛峯寺 教学部教学課 課長 赤堀暢泰(43)
南海極楽橋駅から、急勾配のケーブルカーでぐんぐん登る。弘法大師(空海)が真言密教の道場として平安時代初めに開創した高野山に着く。金剛峯寺は、高野山全体を境内地とし、高野山真言宗の総本山として国内外にある約4千もの寺院や教会を統括している。
国際局、会計課、調度課、山林部……。僧侶や在家職員100人ほどが働く宗務所は、まるで役場のよう。教学部の赤堀暢泰の仕事は、宗団の教育や布教を推進することのほか、教誨師連盟や保育連盟、寺族婦人会などとの連携を図ることだ。
東京生まれ。実家は寺ではないが、父が熱心な在家信者だったことから高野山高校へ進学。親元を離れたその冬に、母を病気で亡くした。近しい人の死に接した初めての体験。無常観を強く感じながらも、15歳まで育ててもらったことに感謝できるようになっていた。
「一緒にいた時間はかけがえのない時間だったと早くに知ることができて、恵まれていました」
「景色を観る」が好きな言葉の一つだ。相手に気づかせずに自然にそこに入っていく。そのために目配り、気配り、心配りを忘れず、どうすればなじむのか考える。人の心に寄り添う僧侶ならではの姿勢だ。自身も課長になって3年目。仕事の内容によって7人の部下の誰と誰を組ませるかを考えている。
「時に、感情の起伏が表に出ませんか」と聞くと、「注意しています。予見不足のときや、自分に対して何かを恐れているときは特に……」。だが、外にはそれをほとんど見せない。
「昔からいつもパリッとしている。知識レベルがとても高くて、尋ねればすぐに答えてくれる。臨機応変でカッコいい」
若い僧侶がそう口にして目標とするような、クールさがある。高野山大学卒業後、高野山専修学院まで進学した20代から、ファッションへの関心も大変高い。
家に帰れば、1歳を迎える娘と妻と過ごす時間を大切にする横顔もまた、カッコよさの一つだ。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・西元まり)
※AERA 2016年7月25日号