「原発震災が起きた際、UPZ(緊急時防護措置準備区域)は屋内退避。しかし本のように大地震の後にさらに大きな地震があれば屋内退避はかえって被害が大きくなり、死傷者が出る可能性があるのです」

 屋内退避したあとの避難方法も現実的ではない。

「放射線量毎時500マイクロシーベルトが避難の基準ですが、域内の人口44万人を年間被曝限度量の1ミリシーベルトに達するまでのわずか2時間でどうやって避難させればよいのか。また、ヨウ素剤はどうやってその人たちに配りに行くのか。実際には無理なことばかりが指針には書いてある。こうした問題点を、国と交渉して直すことが次の知事の仕事です」

 突然起きる災害を考えたら24時間気が抜けない知事職を退任するのは10月24日。その後は、

「荷物の整理をしながら、とりあえずちょっとゆっくりするつもり」

 土俵際で踏みとどまった知事の新たな挑戦に期待したい。(ジャーナリスト・桐島瞬)

AERA  2016年10月31日号