09年に政権に就いた民主党は、「医学部定員を1.5倍に増やすこと」をマニフェストに掲げた。厚生労働省の実態調査で勤務医の絶対数不足が明らかになると、文部科学省は医学部新設の是非を論議する専門家会議を設置した。そんなときに、東北を大震災が襲った。

 被災地を含む地方自治体から打診を受けた文科省は13年末、東北地方で1校に限り医学部新設を認めた。そんな中で、東北福祉大学、宮城大学など仙台で存在感がある大学を退けて、東北医科薬科大学が開学した。

●「大先輩」に頼りつつ

 同大は1939年、東北・北海道地区唯一の薬学専門学校として設立されて以来、77年の伝統を持つ。06年に薬剤師養成課程が6年制になると、研修の充実のため、年金財政の「お荷物」だった東北厚生年金病院(466床)の譲渡を受け、単科の薬科大学として全国初の附属病院を設置していた。その実績がモノを言った形だが、医学部附属病院には600床が必要とされるため、16年にNTT東日本東北病院(199床)の経営も譲り受けた。

 仙台には、長らく東北の地域医療を支えてきた東北大学があるが、旧帝大の一つとして世界レベルを目指す役割も期待されている。福田学部長は「地域医療の負荷の一部を肩代わりし、すみ分けを図っていきたい」と強調した。

 医学部を新設するときの心配の一つが、教員の確保だ。特に、学生に教えられる経験豊富な中堅医師は地域の病院との取り合いになりかねない。「後任の人材がいるかなど、採用者の人選には特に慎重を期し」(福田学部長)、新たに着任した183人の教員の3分の1に当たる61人(うち臨床系43人)を、東北大学医局出身者で確保した。

●国際的な人材を育てる

 8月末には、国際医療福祉大学医学部を来春、千葉県成田市の国家戦略特区に新設することが認められた。37年ぶりだった今年から2年連続の新設になる。

 位置づけは、東北とはかなり異なる。「国際的な医療人材の育成のための医学部」だ。

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