B:私もAさんと同じフリーのエンジニアなので、昔はそういう際どいアプリを作りましたが、今はソシャゲの開発がメインですね。大手開発会社の現場に入ることもあります。当然、開発費はケタ違い。5億円以上費やす開発案件も少なくありません。そういうソシャゲはだいたい1年半ほどかけて開発されます。仮に1人のエンジニアに毎月30万円の給料を出すとして、30人の開発体制なら1年半で約1億6千万円。この業界ではリリース時期が遅れ遅れになるのが普通なので、その分さらに上乗せされる格好です。リリース後は初めの月に3千万円ほどかけて広告を打ち、翌月、翌々月も2千万~3千万円ほど使って一気にユーザーを増やして収益化を目指します。そう考えると、最近のソシャゲの開発費用は3億円が最低ラインといったところでしょうか。

C:それでも、当たるかどうかはリリースしてみないとわからないわけですよね?

B:まあ、博打と一緒(笑)。年間1本、月2億円程度の売り上げが見込めるソシャゲが出せたら御の字。失敗したら、開発宣伝費がほぼムダ金になるので、開発責任者の首が飛ぶのはしょっちゅう。

C:ただ、お金をかければ“ヒットしてるように見せる”ことはできます。「App Store」のランキングは操作できる。

●「ブースト」して上位に

──どのように操作を?

C:日本独自のリワード広告を使うんです。文字通りの報酬(リワード)が発生するタイプの広告。そのリワード広告の温床となっているのが、“お小遣い系アプリ”です。起動すると「このアプリをDLしたら20ポイント(20円分)あげます」といった広告がズラッと並んでいて、DLしたユーザーにその報酬が支払われる仕組み。こうしたアプリが12年頃から急増して、中高生の間で大人気になったんです。中高生は学校が終わって、17時頃から暇になりますよね? その時間帯に合わせて、DLするだけで20~30ポイント、下手すると100ポイントとかの報酬を出すというリワード広告を打つと、17時から一気にDL数が増えて、19時のランキング更新時に反映される。19時頃から会社員などのお金を持った層がアプリをチェックするから、ランキング上位に表示されたアプリがDLされ、課金する人も増え、広告費に見合うリターンが見込めるとしてソシャゲ会社が多用していました。このようにリワード広告でランキング上位に押し上げることを、「ブースト」と言います。

B:ただ、ブーストが機能しにくくなりましたよね。

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