C:アップルは5、6月頃に「リワード広告を利用するな」という通達をアプリ会社に出していた、という話もあります。もともとアップルは報酬をエサにDLさせる行為を規約で禁止していましたから、当然といえば当然の措置。以前は、ランキングトップ20の7割以上がブーストしたアプリのときもありました。お小遣い系アプリの中には最盛期に400万人ものユーザーを抱えていたものもあるので、1割が特定のアプリをDLしただけで瞬間的に40万DL。トップ10入りは簡単にできました。

──お小遣い系アプリは排除されないのですか?

A:排除されてもまた新たなお小遣い系アプリが出てくるから、イタチゴッコなんです。というのも、お小遣い系アプリは「保険の見積もり比較」とか「バイクの買い取り査定」などができるアプリと偽装して、審査に出すんです。これだとDLを促すものでないから、審査にパスしやすい。そのうえで、いざリリースというタイミングでそのアプリ業者はサーバーを切り替えるわけです。そうすると本来なら、「保険の見積もりボタン」などが並んでいたアプリが、「このアプリをDLすると20ポイント!」とかのボタンが表示されたアプリに切り替わる。これを業界では「サーバースイッチ」と言います。

●微課金者が支える

──そのブーストが効かなくなるのはアプリ業者にとってはマイナスですか?

B:ランキングが健全化したことは、業界にとってプラス。一気に課金させて開発資金を回収したら、とっととアプリの運用を停止してしまおうという悪質な業者が排除されますから。今、人気のアプリは、ユーザーと直接触れ合うイベントを積極的に開催しています。要望や反応をくみ取りながらアップデートを繰り返している。アプリという最新のビジネスで急成長した企業が、アナログなイベントでユーザーを繋ぎとめようとしているのが非常に面白い。

A:ポケモンGOは業界全体を変える可能性を秘めていますよね。App Store上位のアプリの「App内課金有り」をタップしてみると非常に興味深い。ここでは、ユーザーが何に課金しているか?というのをランキングで表示しているのですが、パズドラ、モンスト、白などの人気アプリは必ずトップ3内に、「5千円」とか「9800円」とか最も高額な課金アイテムが入ってくる。ところが、ポケモンGOは「120円」「600円」「1200円」と安い課金アイテムが並んでいるんです。要は“微課金者”がアプリを支えているということ。これまで人気アプリが総じて、年間何百万円も課金するごく一部の“廃課金者”に支えられていた構造とまったく違う。新しいアプリ像といえるでしょう。

C:個人レベルの開発者の面白いアプリが上位に表示されるようになったのはいいことですよね。最近ではユニークな脱出ゲームをいくつも作っているハップ社のアプリが、ランキング1位になるほどの人気を博しました。アプリ黎明期のように、お金をかけなくてもアイデアで勝負できる時代がまた訪れているかもしれません。

(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2016年9月19日号