「普段会話するのは近くに座っている3人くらいだけど、他のチームのメンバーとコミュニケーションをとる機会が増えたのはよかったと思います」

●打ち合わせにも持参

 逆に「なるべく目立たない」背筋伸ばしアイテムを求めたのは、ディマージシェアに勤務する矢古宇弘明さん(27)。

 顧客企業が持つデータやコンテンツを活用して収益を最大化するための企画・提案を行う彼は、一日の大半を企画書作成に費やす。休憩なしで4時間以上、作業に没頭することも多い。

 画面をのぞき込んでいるとつい背中が丸くなり、社長から度々「姿勢が悪い」と指摘されていた。腰は痛いし肩も凝る。血が巡っていないせいか、立ちくらみを起こすことも多かった。

「これではいけない」と、使い始めたのがゴムチューブ。引き出しに入れておき、姿勢が固まってきたと感じると、体の前や後ろ、頭の上で引っ張って背筋を伸ばした。しかし……。

「これをやると目立つんです。同じフロアではエンジニアたちが黙々と作業している。大きなアクションで目を引いてしまうのが気になってしまいました」

 そこで、人目を気にせず姿勢を整えられるアイテムとして、イスの座面に置くシートに着目。ロフトや東急ハンズで試し座りをして選んだのが「バックジョイ」だ。

 気に入ったのは、クロックスシューズなどでも使われている軽量発泡素材である点。プラスチックより通気性がよく、座り続けても蒸れにくい。他の部屋で長時間打ち合わせをするときに持って移動できるのもいい。

「座っているだけで無意識のうちに背筋が伸びる。姿勢を注意されることがなくなりました」

 イスでも座面に置くシートでもなく、着るタイプのアイテムを活用しているのが、アイアンドシー・クルーズに勤務する井口和宏さん(31)だ。

 学生時代からいつも重いノートパソコンを持ち歩いており、母親や彼女から背を指摘されていた。「かっこ悪いよな。直さないとな」と考えてはいたが、いつも気づくと背中が丸くなっている。原因の一つは181センチという身長だ。

●机とイスの高さがカギ

 電力・ガスの販売会社とその需要家をマッチングするサービスの事業企画および提案活動を行う井口さん。企画書を作成するため長時間座っていることも多いのだが、自身の身長に対してオフィスの机が低い。自然と前傾姿勢になり、細部までこだわって企画書を作り込むうちに、さらに前のめりになっていってしまうという。

 前出の産業理学療法研究会の高野会長によれば、

「デスクやチェアはかかとがしっかり床につき、肩が持ち上がったりひじが浮いたりしない高さがいい。背もたれの角度を自分に合わせて調整すれば、上半身荷重の6割をカットできます」

 しかし、イスの高さは変えられても机の高さまで調整可能だというケースは、多くはないだろう。

 井口さんの場合、全国各地への出張も多い。背の高さゆえキャリーケースの持ち手の高さも合わず、移動中の歩き姿勢も前のめり気味。休日には所属するヨットレースチームの練習にいそしむが、ここでも腰を丸める姿勢のポジションを担当している。背筋は、オンでもオフでも伸びるひまがなかった。

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