そこで、デスクワーク中も出張中も身に着けていられる背筋伸ばしアイテムとして、「加圧Tシャツ」を導入した。着圧によって自然に背筋を伸ばす、「機能性インナー」だ。

「締め付けすぎず、腰回りに適度な圧迫感がある。腰が固定されている感じがして背中を丸めづらく、上半身が支えられている感覚。通気性がよく、夏場も蒸れないのがいいですね」

●お風呂上がりに15分

 もちろん、「危機」の根本的な解消は自宅でという人もいた。

 技術系人材サービス会社、VSNに勤務する下田瑞希さん(27)は、仮想環境の構築を手がけるエンジニア。顧客である通信キャリアに常駐し、一日7時間はパソコンに向かう。通信インフラを扱うだけに、ミスやトラブルは何百万という人に影響を及ぼし億単位の損害を生む可能性がある。だから、細心の注意を払い、画面に目を凝らす。

「目を酷使するので、それが背中にも伝わり、全身がこわばる。繁忙期には右腕にしびれを感じたこともありました」
 リフレッシュのため、休日には会社の「農園サークル」に参加し、会社所有の農園でのびのびと体を動かしながら畑仕事をすることで、固まった体をほぐしている。会社では、ウォーキングや水泳などのイベントも行われているという。

 しかし、こうした活動だけでは日々の体の凝りの解消に追いつかない。下田さんの日課は、「ヨガポール」を使ったストレッチだ。

 長さ約90センチ、直径約15センチのヨガポールの上に寝て、体を左右に転がすほか、腕を上げたり広げたりする。ストレッチ講座に参加したときに初めて体験。「海にぷかぷか浮かんでいるみたい」にラクだと感じ、その場で購入した。

 毎日、お風呂上がりに化粧水パックをしながら約15分、ヨガポールでストレッチをしている。

「肩が気持ちよく沈み込んで一日の凝りをリセットできます。使い方によっては体幹トレーニングもできるのがいいですね」

 パソコンの文字が小さいと、顔を近くに寄せたくなり、前傾しがちになる。

「画面を拡大したり文字サイズを大きくするだけでも違う」

 と前出の高野会長。

「30分~1時間に1回、オフィス内を歩くのがお勧め。肩こり予防には首を回したり両手を上げたりするストレッチ、腰痛予防には、腰に手をあて3秒間体を反らす運動が有効です」

(ライター・青木典子)

AERA 2016年9月5日号