7月13日のNHKのスクープ直後は生前退位に懐疑的な立場だった、日本大学の百地章教授(憲法学)はこう話す。


「公務に対する天皇の真摯なお考えに深く心を打たれた。長寿と、健康で行動的であることは、必ずしも両立しません。超高齢社会に入った日本では、必然の問題提起だったのでは」

 前出の参与経験者は、

「天皇は晩年の大正天皇や香淳皇后の置かれた状況に、大変心を痛められたと聞く。尊厳を守るためにも、自身の意思によって退位することを重視されていたように思う」

 15年3月までやはり宮内庁参与を務めていた東京大学の三谷太一郎名誉教授(日本政治外交史)は、天皇が「象徴天皇」を突き詰めた末の、国民への問いかけだったと捉える。

「旧憲法の天皇は『神聖不可侵』であり、それゆえ非行動者でした。今上天皇は、戦没者慰霊や被災地慰問など公務を通じ、象徴天皇とは何かを考え、行動者として実践されてきた。国民がどう受け止めるかも念頭に置き、責任も負ってきた。いま、国民がどう受け止め、判断するかが問われていると私は考えています」

(アエラ編集部)

AERA 2016年9月12日号