近代日本初となる事態に世論のざわめきが止む気配はない。一方で、皇居では静寂が続くが……(※イメージ写真)
近代日本初となる事態に世論のざわめきが止む気配はない。一方で、皇居では静寂が続くが……(※イメージ写真)

 逝去を待たずに天皇が退位し、皇太子が新天皇になる──。シンプルなことのようだが、近代日本では直面したことのない事態。一体いつから検討されていたのだろうか? 専門家に疑問をぶつけた。

 天皇の周辺で生前退位が議論されはじめたのはここ数年のことではない。ある宮内庁参与経験者が、匿名を条件に内幕を明かした。

「天皇自身の意向を初めて聞いたのは、2010年7月と記憶しています。以来、皇后も交え、幾度も議論されてきました」

 御所で行われる会食兼会議、いわゆるワーキングディナーが議論の場だった。熱心な議論は時に深夜まで及び、天皇は立ち上がったまま議論することもあったという。天皇も皇后も参与も自由に、忌憚なく意見を出し合った。当初は実現が難しいのではと考える参加者も多かったが、天皇の決意は固かったという。

「当時、陛下は70代。『80歳までは』という気持ちも伺ったように思う。責任感の強い方ですから、早く意思を表明したいというお気持ちもおありだったろうし、その意思をどう国民に伝えるかも議論されてきた」

「お言葉」までに6年。

 この参与経験者は言う。

「正直に言えば、思いのほか時間がかかった」

 国民は「お言葉」をおおむね好意的に受け止めた。

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