AIは集めたデータを日々学習し、いつどのくらいの客が来店しそうか予測も出す。それに合わせて、店はスタッフのシフトや在庫数を最適化。100人の予想に対し70人しか来店していなければ、フェイスブックやツイッターに自動的に広告を出したり、近くにいる人のスマホアプリにクーポンを配信することも可能だ。


「世界中でも、ここまでやっているのは他にないはず」(同)

●評価軸を要素分解

 1年前から導入したアパレルブランドLE JUNのある店舗では、入店客の中でどのくらいの客が実際に商品を購入したかという「買い上げ率」が2、3ポイントアップした。これは買い上げ率の平均が10%に満たないと言われるアパレル業界では驚異的な数字。売上規模にもよるが、1店舗あたり年間で百万円単位の売上増となるようなレベルだ。同ブランドの店舗運営責任者、町井優子さんは、人材育成にも役立っていると話す。

「買い上げ率がスタッフごとに出せるので、このスタッフは日によって接客にムラがあるといった細かいことまでつかめます。個人の目標が立てやすくなり、一人一人の意識も向上しました」

 空調メーカーのダイキン工業は6月、ABEJAのディープラーニング技術を活用して、業務改善に取り組むと発表。東急電鉄もこの技術を使って、人の流れを予測し「街を最適化」する実験を始めている。ABEJAが目指すのはあらゆる分野の最適化だ。岡田さんは言う。

「スタバに入ったのに席がないとか最悪じゃないですか。町中にセンサーがあって、歩きながらどこのスタバがすいてるかスマホですぐわかる。そんな便利な社会にしていきたい」

 AIによる最適化の波は、会社の中でアナログ度が高かった人事の領域にも押し寄せている。

「この間面接したAさんとBさんはどうだった?」

「我が社のAIの判定では、Aさんの活躍可能性は80%。Bさんは40%と出ています」

 近々、あなたの会社でもこんな会話が聞かれるようになるかもしれない。ビズリーチが開発中の人事支援システムHRMOS。6月にリリースされたのは、社内に散在する人事データを一元管理するサービスだが、最終的に目指すのは、それぞれの会社・部署で活躍できそうな人材の特徴をAIが導き出し、採用や配属にフィードバックさせる仕組みだ。開発を指揮する竹内真さんは言う。

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