膨大なデータから自ら学び、どんどん賢くなるAIは、一体どこまで進化するのか。現段階のAIは、ある特定の問題を解決する「特化型AI」で、人間と同じように、様々な問題に対応できる汎用性はない。普通に人間と話し、自我を持つ、鉄腕アトムやドラえもんの頭脳のような「汎用AI」こそが、人間の知能を超す「シンギュラリティ」を起こすと言われており、世界ではグーグルを筆頭に、激しい開発競争が行われている。

 日本でもNPO法人「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」や、前出の栗原さんがセンター長を務める電気通信大学人工知能先端研究センターなどで研究が進んでいる。そうした中、人それぞれの「人格」をコピーし、他者と違和感なくコミュニケーションできる「パーソナル人工知能(PAI)」の開発に挑んでいるのが、ベンチャー企業のオルツだ。

 スマホやタブレットなどにユーザーそっくりのアバターが現れ、よく似た声とイントネーションで、その人っぽい冗談を交えながら会話する。使えば使うほど、ユーザーの知識や経験、性格や癖を学び、本人の意図をくんだ形で仕事をしてくれる。

 それぞれの人格の把握には、SNSやメールなどの文字情報、GPSの位置情報、ウェアラブルのセンサーから得る心拍数などの生体情報といった様々なデータを使うらしい。同社CTOの米倉豪志さんによれば、「こういうバイオリズムの時は、こんな発言が多い」といったことも学んでいくという。

「実はその人らしさは、他人のほうがよく知ってるということもあります。そうした他者からの情報も付加すると、より『らしさ』が増します」(米倉さん)

 実現すれば、歴史上の偉人を蘇らせたり、死後も自分のコピーAIが生き続ける、なんてことも可能になる?

●ヒューマノイドと共生

「そうなると思います。いまAIは一部の研究者や巨大なビジネスのものでしかありませんが、僕たちはそれをもっと一般の人が使えるものにしたい。IBMが開発するワトソンが目指しているのは完全無欠な神のようなAIでしょうが、人格コピーAIは、より人間らしいもの。のび太のコピーAIはやっぱり怠け者なんです」(同)

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