東京都港区立東町小/保健室には、子どもが自分の症状を伝えられるように、「おなか=stomach」など体の部位を絵と英語で説明する貼り紙がある。学校だよりや給食の献立表も日本語と英語で作成し、配布している。もともとは児童数50人余りの小規模校だったが、国際学級が始まって4年、今では全校児童数が418人になっている(撮影/伊ケ崎忍)
東京都港区立東町小/保健室には、子どもが自分の症状を伝えられるように、「おなか=stomach」など体の部位を絵と英語で説明する貼り紙がある。学校だよりや給食の献立表も日本語と英語で作成し、配布している。もともとは児童数50人余りの小規模校だったが、国際学級が始まって4年、今では全校児童数が418人になっている(撮影/伊ケ崎忍)
横浜市立潮田小/職員室や校長室などの場所を示す案内板は、日本語のほか、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、英語と計5カ国語で表記されている。国際教室の担当教諭や講師だけでなく、子どもや保護者の母国語を話すサポーターが相談に乗るなど、支援体制の充実を図っている(撮影/写真部・堀内慶太郎)
横浜市立潮田小/職員室や校長室などの場所を示す案内板は、日本語のほか、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、英語と計5カ国語で表記されている。国際教室の担当教諭や講師だけでなく、子どもや保護者の母国語を話すサポーターが相談に乗るなど、支援体制の充実を図っている(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 首都圏などでは小中学受験が盛んだが、日本の小中学生の9割超は公立校で学んでいる。21世紀型教育も、公立にどう広げていくかが課題だ。注目の分野で一歩先を行く学校を取材した。

*  *  *

 男の子が熱心に見つめる黒板には、「たのしい学校」「大きい学校」という板書がある。

「じゃあ、教室にはどんな言葉がつくだろう?」

 先生が尋ねると、男の子は自信なさそうに答える。

「長い?」
「長いとはあまり言わないかな」
「大きい?」
「それもいいけど、もう一つ言い方があるね。広い教室。広いってわかる?」

 マンツーマンで授業を受けているのは、今年5月にミャンマーから来日したばかりの小5のマウンズェくん。日本語は全くしゃべれなかったが、短期間でひらがなとカタカナをマスターし、漢字を覚えるまでになった。

●外国籍などの子が2割

 京浜工業地帯に位置する横浜市鶴見区の市立潮田小学校。ここには、マウンズェくんのように外国籍や二重国籍などの子どもたち130人近くが通う。全校児童のじつに2割にのぼり、子どもたちが関わりを持つ国はブラジル、ボリビア、フィリピンなど16カ国とバラエティーに富んでいる。

 同校で多国籍化が進むきっかけとなったのは、1990年の出入国管理法の改正だった。海外で暮らす日系人に、日本で働ける道が広がり、工業地帯の鶴見区にも仕事を求めて外国からの移住者が増えた。

 20年以上が経ち、両親に連れられて日本にやってくる子もいれば、定住した両親の間に日本で生まれた子どもも多くなってきた。だが、いくら日本に長く住んでも、家では親の母国語で話すため、日本語はあまりできないという子もいる。

 そんな子どもたちは、クラスメートと同じ授業に出席せず、別室で日本語や各教科の授業を受けることができる。横浜市内にはこうした国際教室が80の小中学校にあり、潮田小に設置されている国際教室では7人のスタッフが指導にあたっている。授業を行うだけではなく、時には学校で配布する行事のお知らせの翻訳や、入学時に必要なものを書いた冊子作り、三者面談の通訳などの保護者対応に追われることも。カバーする範囲は幅広い。

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