ただ、12年に糖尿病1型と診断され、今はインスリンを日に4回打つ。激職に耐えられるかと心配する声を「ただの生活習慣の一つ」と一蹴する。口ずさむのはABBA(アバ)の「ダンシング・クイーン」、愛読書はイギリスの女性作家、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』だ。オペラは、モーツァルトの「魔笛」の「夜の女王のアリア」がお好み。

●政治は女が回す時代

 むろんメイ首相に批判もある。「靴ばかりが目立ち、政治手腕をふるった印象がない」「次の選挙までのつなぎに過ぎない」などだ。しかし新首相は「国民投票の結果は、単にブレグジット(EU離脱)を決定したばかりではない。政府は国民への対応の見直しを迫られていると捉えるべき」「少数の特権階級のためではなく、私たち全員のための英国のビジョンが必要だ」と述べた。組閣では、離脱派の顔だったボリス・ジョンソン前ロンドン市長を外相に起用して驚かせた。

 メイ首相は、ドイツのメルケル首相、さらにアメリカで大統領に当選すればヒラリー・クリントンと並ぶ世界を牽引する女性リーダーの一人となる。

 英国の歴史を振り返ると、国難の際には決まって女性が登場した。エリザベス1世、ビクトリア女王、サッチャー元首相がその例だ。大学時代に「首相になる」と明言したと言われる。第2の「鉄の女」になれるか。(フリージャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2016年8月1日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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