左から7月7日、6月27日、7月12日のスナップ。リップ柄のフラットシューズにパープルのワンピース。ヒョウ柄パンプスに水色のハーフコート。モード誌の編集長もかくやという、ド迫力のファッショニスタぶりだ(写真:gettyimages)
左から7月7日、6月27日、7月12日のスナップ。リップ柄のフラットシューズにパープルのワンピース。ヒョウ柄パンプスに水色のハーフコート。モード誌の編集長もかくやという、ド迫力のファッショニスタぶりだ(写真:gettyimages)

 EU離脱騒動での男たちの裏切り・内ゲバ合戦を尻目に、調整役として活躍した新首相。スペイン無敵艦隊を撃退した
エリザベス1世に、「鉄の女」サッチャー元首相。英国の国難は女が救うのか。

 テリーザ・メイ首相(59)は議員当選5回、影の雇用・年金相、内相など議員歴約20年を誇る。今回の国民投票では残留派だったが表立った活動は控えた。それでこのたび、残留・離脱両派の調整役として適任とされた。

 メイ首相の父親は英国国教会の聖職者で、彼女には道徳を順守するよう繰り返した。暮らしに余裕はなく、グラマー校(私立パブリックスクールに相当する高い教育レベルの公立校で、学費は基本的に無料)からオックスフォード大学(地理学専攻)に進んだ。2歳年下のバンカーの夫と、パキスタンの故ベナジル・ブット元首相(2007年12月に暗殺・享年54)の引き合わせで、大学の保守党学生協会のディスコで知り合った。結婚後まもない25歳の時、父を交通事故で、母を難病で立て続けに亡くした。一人娘の悲嘆を夫は献身的に慰め支えたという。

●ヴォーグ生涯定期購読

 3度目の挑戦で念願の国会議員になると、注目されたのは靴だ。02年に「保守党は意地悪な政党と国民はとらえている」とスピーチした時はヒョウ柄だった。レインブーツを履いた時もヒョウが吠えていたし、手袋にもヒョウがあしらわれていた。ほかにもリップマークが散っている靴や、キラキラ光る宝石が付いている靴も。「靴フェチ」「イギリスのイメルダ夫人」と陰口をたたかれても、涼しい顔だ。

 最高のぜいたくは、ファッション雑誌「ヴォーグ」の定期購読期間を「生涯」にしたことだが、高級ブランドを身にまとうわけではない。スタイリストは置かず、なじみのブティックで選択する。首相に決定後、首相官邸を訪れた時はキャサリン妃(34)も愛用するLKベネットのペールブルーの大型バッグとトレードマークのヒョウ柄のパンプスを選んだ。男性政治家に似せて、ユニフォームとしてのスーツに収まるのではなく、女性政治家が独自のおしゃれを楽しむ「パワフル・フェミニティー」の時代を迎えた、と書きたてられた。

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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