●出生率1.8は画

 外国人労働者の急増の裏に、少子高齢化による働き手の減少があるのはいうまでもない。国内の生産年齢人口(15~64歳)は1995年に8716万人だったが、15年には7592万人。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、60年には4418万人に落ち込む。

 企業は人手が十分に確保できないと受けた仕事をこなせなかったり、新しい店を出せなかったりして、もうけのチャンスを逃しかねない。介護、建設、接客といった業種を中心に働き手を求めるニーズは強まっている。労働力の量は一国の経済成長も左右する。働き手の減少は、日本経済が「ほぼゼロ」という低成長にあえぐ大きな要因だ。

 今は1.4程度の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)を1.8に引き上げ、女性や高齢者にどんどん働いてもらい、日本人だけで人口1億を維持して経済の高成長も実現する。安倍政権はそんな目標を掲げ、「1億総活躍社会」をスローガンにしている。だが、「出生率1.8」は30年ほど前の水準だ。目標達成に向けたハードルは相当高いと見る専門家が目立つ。

「働き手の減少をこのまま放っておけば経済成長に深刻な影響が出るでしょう。とくに医療・介護のような対人サービスや建設・製造現場の熟練技能者は、ロボットなどですぐに代替するのは難しい。一定の技術や資格を持つ外国人の受け入れ拡大も、選択肢として考えていく必要があるのではないでしょうか」

 日本総研の野村敦子主任研究員はそう指摘する。

●日本人社員から暴言

「日本人にもいい人はいます。日本が嫌いになったわけじゃないけど……」

 川崎市の建設会社で技能実習をしていたベトナム人男性(26)はさばさばとした表情で語った。同じ寮に住んでいた仲間の実習生のスマートフォンには、男性がこの会社の日本人社員から受けた暴行の様子を隠し撮りした動画が保存されていた。

「お前がいけないのか、俺がいけないのか? この野郎、日本人なめてんだろ」

次のページ