「とくに3、4年前から、人手が集まらないという話を取引先の方などからよく聞くようになりました。学校を回っても求人広告を出しても空振りばかりだったり、せっかく入社しても2、3カ月でやめてしまったり、と。このままでは技術の伝承が難しくなるおそれがあります」

 野原産業の岩崎敏行副社長は業界の苦境をそう説明する。

 国土交通省によると、建設業の働き手の高齢化は00年代初めごろから急速に進み、15年には3人に1人が55歳以上だ。ピークの1997年に455万人いたとび工や型枠工といった「技能労働者」は昨年には331万人。そこに東日本大震災からの復興や2020年の東京五輪に関連する大型事業のラッシュが重なり、人手が確保できずに工期が遅れるケースも相次ぐ。

 政府は20年度までの措置として、建設業で3年間の技能実習を終えた外国人を、正式な労働者としてさらに2~3年雇えるようにした。チーンさんも実習後は引き続き日本で働きたいと考えているという。建設業界では「20年度以降も、技能があり日本で働きたいと考える外国人を労働者として雇える制度をつくってほしい」(野原産業の岩崎副社長)という声が強い。

●「高度人材」は積極的

 研究者、技術者、経営者といった「高度人材」は永住許可を得やすくするなど積極的に受け入れるが、単純労働者は認めない──。政府の「公式見解」を端的に表現するとそうなる。

 これは受け入れ拡大に慎重な世論を反映している、ともいえる。読売新聞が昨年夏に実施した世論調査によると、「労働力確保のために外国人労働者をもっと受け入れるべきだと思うか」という問いに「そう思う」との回答は33%。「そうは思わない」は64%にのぼった。

 現実はどうか。厚生労働省によると、国内で雇われて働く外国人は昨年10月末時点で90万7896人。今と同じ手法で調べ始めた08年からほぼ倍増した。この調査の過去のデータに基づき計算した国内の労働者に占める外国人の比率は、国際的に見れば低めだ。ただ、厚労省の調査では個人事業主や経営者、不法滞在者などは対象外。こうした人を含む「国内で働く外国人」は100万人を大きく上回るとみられる。コンビニ、外食チェーン店、工場の生産ライン、ホテル、農場、漁船……。いろんな職場で働く外国人を目にする機会は全く珍しくなくなった。

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