早期支援で貧困連鎖を防ぐ 養子縁組や里親の現場

貧困

2016/07/01 11:30

生みの親から託され、養子縁組を待つ赤ちゃん。人生は始まったばかりだ(撮影/後藤絵里)
生みの親から託され、養子縁組を待つ赤ちゃん。人生は始まったばかりだ(撮影/後藤絵里)

 母親の腕の中で赤ちゃんはスヤスヤと寝息を立てていた。

「この子には幸せになってほしい。あなた方が必要なんです」

 母親はそう言うと、育ての親となる夫婦に赤ちゃんを手渡し、後は涙で言葉を継げなかった。母子と向き合った夫婦は、

「責任を持って育てます」

 と言い、赤ちゃんをそっと胸に抱いた。

 赤ちゃんは生みの親にとって4人目の子だった。妊娠後期に入り、夫が突然解雇される。妻は親の介護のために仕事を辞めていた。生活は困窮し、妊婦健診も受けられなくなった。夫婦で何度も話し合い、出した結論が養子縁組だった。

 インターネットで、妊娠相談や養子縁組仲介をする民間団体「アクロスジャパン」にたどり着いた。代表の小川多鶴さんは、夫婦の誠実な生き方や子どもへの思いを知り、生活保護などの公的支援を得て自力で育てる方法も真剣に提案した。だが夫婦は、

「この子に、十分な教育や機会を与えられる『未来』を描けない」

 と話したという。

●生涯の不平等解消

 10代の妊娠、不法滞在の外国人、風俗で働く女性など、小川さんには妊娠に悩むさまざまな女性からの相談が寄せられる。多くの場合、問題は複層的だ。親自身がまともな養育を受けていない、軽い知的障害があるなど多重の困難を抱え、支援を求めるすべも知らない。いずれも生まれる子の貧困につながりかねない。小川さんは言う。

「子どもを救うには、まずお母さんを助けなければ」

 こうした貧困の連鎖を断ち切る現実的な方法の一つとして注目されるのが特別養子縁組だ。理想を言えば、実の家庭で安定した子育てができることがベストだ。だがそれがかなわず、子どもの利益を最優先しようとした場合、安定した養育ができる子どもを望む夫婦に子どもを委ねるやり方だ。

 幼い頃の成育環境がその後の発達に大きな影響を与えることは海外の研究でも実証されている。英国の「ERA研究」は、1990年代初頭にルーマニアから養子として英国に引き取られた孤児のうち、生後半年未満で養子となった子と、半年~3歳半までに養子となった子の発達度を継続して調べた。11歳時で特別な教育支援を必要とする子の割合は前者が4%、後者は39%と有意な差があったという。

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