アベノミクスの数少ない成果とされる株高も、最近は1歩進んで2歩下がるようにぐずつき気味。梅雨が明ければ…ならいいのだが(撮影/写真部・大野洋介)
アベノミクスの数少ない成果とされる株高も、最近は1歩進んで2歩下がるようにぐずつき気味。梅雨が明ければ…ならいいのだが(撮影/写真部・大野洋介)

 参院選が公示された。7月10日に投開票される。安倍政権はまた、争点を経済に置く考えだ。

 しかし、アベノミクスの肝「異次元金融緩和」は完全に行き詰まった。追い込まれた首相は、時代遅れの予算バラマキを繰り出そうとしている。

 巨額のツケを清算するのは誰か。

 通常国会が閉会した6月1日。事実上の参院選のスタートを前に記者会見に臨んだ安倍晋三首相は、左手の人さし指を立てて声を張り上げた。

「アベノミクスを加速するのか、後戻りするのか。これが来たる参議院選挙の最大の争点であります。アベノミクスの3本の矢をもう一度、力いっぱい放つため、総合的かつ大胆な経済対策をこの秋、講じる考えです」

 2017年4月に予定していた消費増税を2年半先延ばしすると表明するとともに、国や自治体がお金を使って景気をテコ入れする「財政出動」を再び打ち出した。

 秋に想定される国の補正予算は、5兆~10兆円規模という見方が広がる。購入時の金額以上の買い物ができる「プレミアム付き商品券」発行や公共事業、保育施設の整備といった項目が対策の目玉になりそうだ。

 バブル崩壊後、今の安倍政権も含めて、政府は財政出動による景気対策を何度となく繰り返してきた。それでも日本経済は長い停滞のトンネルから抜け出せず、国の借金は1千兆円超という途方もない規模に膨らんだ。今回はうまくいくのか。

 池袋駅から西武線に揺られて西へ20分ほど。東京都西東京市の住宅街の小さな電器店で、60歳代の男性店主は淡々と、昨年秋のことを話してくれた。

●地域経済底上げも消費刺激も期待薄

「プレミアム付き商品券のおかげで潤った、という感じは全くないですね。店の売り上げは例年とほぼ同じ。お得な商品券が手に入ったからテレビでも買おうか、なんて昔の話でしょ。このあたりでも、券を使ってスーパーでふだんの買い物をする人が多かったと聞いています」

 14年4月に消費税率を8%に引き上げた後、政府が打ち出した緊急経済対策の柱の一つがプレミアム付き商品券だ。2500億円ほどの国費からプレミアム(割り増し分)の元手をもらい、全国の自治体の97%が発行した。プレミアムは1~2割。2割なら1万円で買った券で1万2千円分の買い物ができるとあって、発売日には各地で券を買い求める行列ができた。

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