安倍首相在任中の改憲はさすがに無理でしょう。朝日新聞記者時代から30年以上にわたって日本の政治を見てきました。かつての政界には、田中角栄、大平正芳、中曽根康弘、竹下登、宮沢喜一らそうそうたる人物がいて、エネルギーにあふれていました。いま、日本社会には社会保障や財政など問題が山積していますが、彼らに比べていまの国会議員には政治的パワーが乏しい。憲法改正できる余力はありません。

 宮沢元首相が言っていました。

「力まずに、目の前の大事な問題を優先順位をつけてやるのが保守政治だ」と。自民党はより緊急性の高い問題から取り組むべきです。そうしなければ再び政権交代が起こり得る。

70年余り前、戦争を引き起こしたという原罪がある日本にとって、憲法は「もう戦争はしません」という世界に向けた政治的なメッセージです。時の流れとともによりよい形にし、さらなる平和を目指そうという姿勢はあっていいでしょう。急ぐことはありません。現行憲法が100年を迎える2045年を目標に、細く長く議論をしていけばいいのではないでしょうか。

(構成・アエラ編集部)

AERA  2016年5月16日号より抜粋