大阪府堺市に本社を置くシマノは1921年の創業以来、自転車そのものの製造は手がけていない。変速機やブレーキといった自転車の心臓部と言えるパーツをひとまとめにして製造し、完成車メーカーを向こうに回して主導権を握った。日本の完成車メーカーが中国勢などとの競争に苦戦して衰退するなか、高級車向けの電子制御変速機に代表される高い技術力を武器に取引を広げ、世界トップ級の部品メーカーにのし上がった。

海外売上比率は9割ほど。パソコンの肝である中央演算処理装置(CPU)で世界市場を制した米インテルになぞらえ、「自転車業界のインテル」とも呼ばれる。日本語を母語としないメンバーが1人でも入る会議では必ず英語を使うなど、98年から英語が「社内共通語」。押しも押されもせぬグローバル企業だ。

 技術力を磨くだけでなく、部品専業でありながら完成車の市場そのものを広げる活動にも取り組んできた。OVEの1号店は06年、東京・南青山に開設。14年にはシンガポールに自転車の歴史や現地のサイクリングロードの情報を得られる体験型展示施設を設けるなど、海外での普及活動にも積極的だ。

 ランキングで評価項目とした3項目のうち、特に「安定性」と「収益性」で高得点を記録。市場全体の育成にも力を入れながら、自転車産業の中でも利幅の厚い「おいしい分野」に集中してしっかり稼ぎ続け、その積み重ねによって盤石な財務基盤を築き上げた結果と言える。

(アエラ編集部)

AERA  2016年2月22日号より抜粋