シマノ世界トップ級の自転車部品メーカー。完成車はつくっていない。従業員1万3千人ほど。大阪市中心部にある「OVE中之島」は、自転車ファンのすそ野を広げるために設けた施設だ(撮影/楠本涼)
シマノ
世界トップ級の自転車部品メーカー。完成車はつくっていない。従業員1万3千人ほど。大阪市中心部にある「OVE中之島」は、自転車ファンのすそ野を広げるために設けた施設だ(撮影/楠本涼)

 世界経済に暗雲が立ちこめ、株価がジェットコースターのように乱高下する。規模や歴史を誇る名門が「強い会社」とは限らない乱世だ。国内の上場企業を、「収益性」「成長性」「安定性」の独自の視点からランキングしたところ、トップに躍り出たのは意外な分野の企業だった。

 大阪市中心部の超高層ビル、中之島フェスティバルタワー。その地上階の一角に、「OVE(オーブ)」と書かれたガラス扉がある。内装は落ち着いた雰囲気のウォールナットの木板で統一。スポーツタイプの自転車やサイクリング用のウェアが展示されていることを除けば、しゃれたホテルのラウンジのようだ。利用者はソファでコーヒーを飲みながら、本棚に並ぶ自転車関連の本を読んでくつろいだり、常駐する「コンシェルジュ」に自転車に関する相談に乗ってもらったりできる。

 今回のランキングで総合1位に輝いた自転車部品メーカーのシマノが2012年11月、自転車ユーザーのすそ野を広げるために設けた国内2カ所目の施設だ。シマノは釣り具も手がけるものの、主力事業は比較的地味な内容だけにメディアに登場する機会はそれほど多くない。ただ、自転車ユーザーとの貴重な接点であるはずのOVE中之島の店内を見渡しても、社名はまったく目に入らない。

「当社にとってはすべての自転車メーカーがお客さま。市場が広がれば部品が売れるチャンスは広がる。シマノの名を売りたいのではなく、自転車文化を広めることが目的なんです」

 白石博昭店長はこう説明する。OVEでは、散歩感覚で街中のサイクリングを楽しむ「散走」を月2回ほど企画。11段変速の本格的なスポーツタイプ自転車で走るだけではなく、スイーツの名店巡りや歴史的建造物の撮影会を組み込むなど、毎回趣向を凝らす。「ママチャリ」以外にほとんど乗ったことのない人に、軽やかな乗り心地といったスポーツタイプ車の魅力を知ってもらうことが狙いだからだ。

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