未来に行くのは簡単。でも、過去に行くのは…
未来に行くのは簡単。でも、過去に行くのは…
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 子どもの頃に誰しも憧れたであろう、「ドラえもん」に登場するひみつ道具。夢の道具のひとつが、「タイムマシン」だ。技術的に実現は可能なのか、専門家に聞いた。

 ひみつ道具のタイムマシンは、のび太の勉強机の引き出しが搭乗口で、形はまるで空飛ぶじゅうたん。あなたの机の引き出しも……というわけにはいかないが、未来に行くことは、理論上は十分に可能だ。

 知られているようにアインシュタインの「特殊相対性理論」は、「すべての物質は光より速く移動することはできない。物質は光速に近づくと質量が増加し、時間の流れが遅くなる」。速いスピードで移動し続けると、地上で普通に暮らすより時間がゆっくり流れる。例えば、双子の赤ちゃんの兄を地上に残し、弟は光速に近い乗り物の中で暮らしたら、80年後、地上に戻ってきたとき弟は10歳。70年後の未来に到着したことになるのだ。これが「ウラシマ効果」。

「新幹線に乗って東京から博多まで1200キロを移動すると、10 億分の1秒だけ未来に行くことができます」と話すのは、自然科学研究機構の機構長、佐藤勝彦東京大学名誉教授(宇宙物理学)だ。

「未来に行くのは簡単。光速に近いスピードで動く乗り物さえ開発すればいいのですから。でも、過去に行くのは難しい」

 さまざまな仮説が立てられたがいずれも証明されていない。

「過去に行くタイムマシンが完成すると、過去に戻って自分を産む前の母親を殺してしまったらどうなるのか、という自己矛盾が生じる。多くの物理学者は、過去に行けないことを証明する研究をしています」(佐藤名誉教授)

AERA  2016年1月11日号より抜粋