「センスや感性でものづくりができる時代だ」

 ものづくり産業への参入のチャンスだと感じた。それまで手掛けてきた別の事業を譲渡し、退職金をつぎ込んで10年、GLMを立ち上げた。

 だが、すぐに壁にぶつかった。EVを試作はできても、認証が取れず、売れなかったのだ。

 自動車で要になるのは、車台の骨組み部分だ。ぶつかった時に衝撃を吸収するように前方を軟らかくして、後ろのキャビンが壊れにくくする。ここがうまく設計できないと、安全基準をクリアできない。自動車産業に新規参入が難しい大きな理由だ。

 GLMの資金が底を突きかけたとき、救いの手が差し伸べられた。

「自由な発想で一から車を作ってみたい」

 大手メーカーの優秀なエンジニアが、会社を辞めて飛び込んできてくれたのだ。「夢がある」と元ソニー会長の出井伸之氏らも出資。京都企業のGSユアサやニチコンの協力を得て、部品調達も可能になった。15年11月、協力工場が稼働。量産体制が整った。

 息を吹き返した小間さんは今、こう思っている。

「面白いものを作ろうという精神とアイデアを育てる場を、大切にしていきたい」

 作り手がワクワク感を取り戻したとき、日本のものづくりが復権するのかもしれない。

AERA  2016年1月11日号より抜粋