EVを一から作ったGLM。ガレージでの開発がベンチャーらしい。すたっふに共通するのは「おもしろい車を作りたい」だ(撮影/楠本涼)
EVを一から作ったGLM。ガレージでの開発がベンチャーらしい。すたっふに共通するのは「おもしろい車を作りたい」だ(撮影/楠本涼)

 ものづくり大国の地盤沈下が叫ばれて久しい日本。世の中はモノがあふれ、作れば売れる時代は過ぎた。使い方を意識して技術を生かす「発想の転換」が、再生のカギを握る。

 素人の何げない一言から、挑戦は始まった。

「ミニ四駆みたいに、組み合わせて自動車って作れないの?」

 京都大学発の電気自動車(EV)ベンチャー、GLM(京都市)は2010年、伝説のスポーツカー「トミーカイラZZ」をEVで復活させ、注目を浴びた。その後、国内で製造・販売ができる自動車の認証を得た。

 国内で、大手メーカー以外が自動車の認証を得るのは難しい。それだけ、GLMの高い技術力と製品の安全性が証明されたといえる。

 ただ、GLMにとって、スポーツカーの開発は始まりに過ぎない。目指すのは、車の定義さえも変えるような車づくりだ。

 若者のクルマ離れは日本だけでなく、米国でも起きている。そんな時代に、車を売るにはどうしたらいいか。

「サービスのデバイスとして車を提供したい。そのために、パソコンをカスタマイズするように、車もサービスに応じてカスタマイズできるようにする」と社長の小間(こま)裕康さん(38)は話す。

 例えば、集配業者やタクシー会社にとって、車はサービスを実現するために必要なツールの一つだ。企業は自社のサービスに合わせた車を持てる方がいい。ブランドイメージに合わせてデザインを変えたり、ソフトを搭載してマーケティングに利用したりすることもできるだろう。

「オープンOSのイメージに近い。スマートフォンでいえばアンドロイドのような存在になる」

 そこで生きるのが、ミニ四駆のように車を作る発想だ。ミニ四駆は「基本キット」があれば、初心者でもパーツを変えたり、塗装を施したりしてオリジナルを作れる。

 実際の車の構造を大きく分ければ、上のボディーと、下の車台や駆動部分との組み合わせが基本キットに当たる。GLMはミニ四駆でいえばボディーを外した部分を企業に提供し、自由にカスタマイズしてもらうのだ。

 家電オタクだった小間さんは、アップルがiPhoneを発売したとき、衝撃を受けた。

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