「人間は中身でしょう」という考え方もあるだろう。けれど、たかだか20〜30分の打ち合わせで「人の中身」なんてわからない。相手が何をもって人の印象を決定しているかといえば、事前情報も含めた「外見」というのが現実だ。ラフすぎる装いで、「あなたのことなんか、どうだっていいんですよ」というメッセージは送りたくない。

 ならば「ジャケット+シャツ(可能ならタイ)+ドレスパンツ」の装いはしたいところだ。

ただ、なかにはノータイを貫きたいという人もいるだろう。その場合シャツは、

「ボタンダウンかセミワイドスプレッドのものだけを選ぶ」(メンズファッションスタイリストの齊藤知宏さん)

後者は、襟の間の角度が90度から120度に広がっているものを指し、ノータイでも襟がきれいに開く。ただし、シャツの裾はタックインが厳守だ。裾を外に出したままではスタイルが悪く、貧相で子どもっぽく見える。得することは一つもない。

 色の選択はスーツと同じ。上下で色の濃淡をつければ、外見のメリハリを出せる。

 モノをなるべく持たないのなら、シューズ、ベルト、バッグは、黒で統一しよう。これら三つは、スーツに関係なく色を合わせるのが原理原則だからだ。

 状況に応じたドレスアップは、人の輪を超えて渡り歩く力を、働く人に与える。そう、ミニマリストだって、複雑多様な世の中を渡り歩く「教養」は不可欠なのだ。

AERA 2015年10月12日号より抜粋