コメは米・豪州向けに無関税枠ができるが、あくまで需要に合わせた民間取引。国産米とは味の差があり、価格差も今や小さく、影響は少ないとみられる。

「米国が(関税撤廃にこだわる)共和党政権だったら許してもらえなかった」と胸をなで下ろす官僚もいた。

 逆に言うと、消費者のメリットも大きくない。スーパーで並ぶ輸入牛肉は100グラム当たり200~300円程度。関税が引き下げられるとそれが40~70円程度安くなる。ワインの関税も8年目から撤廃されるが、1千円の商品が130円程度安くなる計算だ。

 確かに値下げはありがたいが、みんな「そこそこ」だ。1980年代から進んだ輸入自由化や円高、その後のデフレで、食料品の価格低下はかなり進んでおり、TPP効果はめだたない。

 ビジネス面でのメリットも「ほどほど」だ。自動車は米国向けの関税2.5%が協定発効後25年目に撤廃される。しかし、各メーカーはすでに世界規模での生産体制がある。部品製造拠点などがあるタイ、インドネシア、中国が将来的に加盟した場合には、大きなメリットになるかもしれないが。

AERA  2015年10月19日号より抜粋