ブレイン社長天毛伸一さん(41)たった一人で渋谷区のマンションからスタートし、昨年末六本木ヒルズに本社を移転。現在、社員35人。著書に『独立不羈』(ダイヤモンド社)(写真:本人提供)
ブレイン社長
天毛伸一さん(41)
たった一人で渋谷区のマンションからスタートし、昨年末六本木ヒルズに本社を移転。現在、社員35人。著書に『独立不羈』(ダイヤモンド社)(写真:本人提供)
『出逢いの大学』著者千葉智之さん(42)幅広い業界に人脈を持つ。異業種交流会をはじめ、さまざまなイベントを主催。自分を「超楽観的」と分析する。これも出会いを広げるにはプラスという(写真:本人提供)
『出逢いの大学』著者
千葉智之さん(42)
幅広い業界に人脈を持つ。異業種交流会をはじめ、さまざまなイベントを主催。自分を「超楽観的」と分析する。これも出会いを広げるにはプラスという(写真:本人提供)
プロノバ社長岡島悦子さん(49)経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。「日本に“経営のプロ”を増やす」ことをミッションに、育つ機会を創出し続けている(撮影/羽根田真智)
プロノバ社長
岡島悦子さん(49)
経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。「日本に“経営のプロ”を増やす」ことをミッションに、育つ機会を創出し続けている(撮影/羽根田真智)

人脈は恋愛と同じ。待っているだけではやって来ない。ただSNSのフォロワー数や名刺の数だけ集めてもダメ。“編集力”が必要だ。(ライター・羽根田真智)

 メーカー勤務の30代半ばの女性は日々、SNSなどで「自分を高めてくれそうな会」のチェックを怠らない。勉強会や講演会などに出席したら、真っ先に講師と名刺交換し、写真撮影。すぐにフェイスブックで披露し、講師やほかの参加者に友達申請する。SNSでつながる人の数ならかなり多い。

 だが、不安だという。スマホという箱の中でつながる人たちが、どれだけ自分を助けてくれたり、影響を与え合ったりできる“人脈”なのかどうか――。

 14年前にたった一人で起業し、現在は六本木ヒルズに本社を構える「ブレイン」社長の天毛(てんもう)伸一さん(41)は、「人脈」についてこう話す。

「人脈をつくりたいと思ったことは一度もない。『あの人と知り合いになると仕事で役立つ』などと言われて、だれかと会うこともない。出会いは自然発生的。そうやって出会った人を、好きになるかどうかに尽きる。好きになった人との付き合いを大切に育てていくことが最重要で、自分に課しているのは、裏切らないということだけです」

●会食は3人まで

 天毛さんが起業したのは大学を出て約2年後。人脈もカネも経験もない。設備投資が少なくて済むメール配信を主とするソフトウェアの会社から始めた。2011年、念願のハードウェア開発に着手。13年に完成したPOSレジ「ブレインレジスター」が今年、ヤマハ、マツダ、ソニーといった大企業と並び、世界3大デザイン賞の最優秀賞に選ばれた。

 ハードウェア開発を始めた時は、素人ゆえ壁にぶつかった。だが、天毛さんがPOSレジへの熱い想いを語ると、出会った人が助けてくれた。

「会社としては無理なので、個人的に協力しましょう」

 そう言ってくれた人は、今では新たに起業。共鳴した人たちとの損得抜きの交流が大切な仲間を築いていった。

 普段、食事や酒を飲む時は、多くて3人までだ。異業種・同業種の交流会や起業家の集まりなどに以前はよく誘われたが、断り続けていると、誘われなくなった。“人脈という枠にくくれない人とのつながり”こそが、自分を助けてくれたという。

「一生かけて一人の友達ができたら御の字。まだ見ぬ遠くの人脈を求めるより、今ある縁に目を向け、1年の関係より2年、2年より3年と、長い関係を築くことのほうがはるかに尊いと思う」

 天毛さんにとって、一般的にいわれる「人脈」のイメージは、誰かの山を登るもの。2合目、3合目などにさまざまな人が配置されていて、それらの人と仲良くなって頂上を目指す。それよりも、自分で山をつくりたい。付き合う人も、自分が本心から付き合いたいと思う人だけに限りたい。天毛さんは言う。

「情報を得ようと思わなくても自然と入ってくる時代。必要以上に摂取すると依存症になってしまう。人脈もそうで、強力なフィルタリングを設けたほうがいいと思うんです」

●結果的に人生が広がる

 SNSなどの発達で簡単に人とつながれる時代だからこそ、膨大なつながりから本当の仲間を見つけるための“編集力”が必要だ。

 自らつながりの場を構築する、『出逢いの大学』著者、千葉智之さん(42)はこう言う。

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